コラムColumn
グリーンキーパーのひとり言5
芝張り
2005年03月01日
芝地をつくるには大きく分けて2つの方法があります。1つは種子から育てるもの。もう1つはターフになった芝地を切って1枚のソッドとして張る方法です。
一般的にベントグラスに代表される「洋芝」は種子から育てる事が多く、家庭や公園でも使用される「高麗(コウライ)芝」や野芝のような「日本芝」は種子繁殖が難しいため、ソッドで張る事が多くなります。
現在、当倶楽部ではティー面に残っている洋芝をコウライに張替える作業を行っています。今回はその様子を中心に「芝張り」について話をしてみたいと思います。
■ 芝切り
芝地から芝を切り出すために、ゴルフ場では「ソッドカッター」という大変便利な機械を持っています。
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ソッドカッターの刃
この機械は根の張った芝地を一定の幅で切りながら下刃も使って1枚のソッドにしていく優れものです。芝の厚さは根の状態にもよりますが、2cm程度までは薄くする事が可能です。そして、このカッターで切るだけでは1本の帯状の芝になってしまうので、運びやすい長さにカットして使用します。
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手作りの芝カッター
しかし、今回の工事のような大面積(ティー1面で平均200㎡)を芝カッターによる手作業で1枚づつ切っていくのは大変なので、当倶楽部では、ソッドカッターの下刃を取り、タテ刃だけで、最初に一定間隔で筋切りをしておきます。その後、上記のソッドカッターを横向きに入れると見事に全ての芝が切り終わるのです。
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タテ刃のみのカッター
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タテ刃、筋切り風景
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ソッドカッター作業風景
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作業終了
芝運び出し
今回の工事では、切り取った芝は洋芝(ブルーグラス、ライグラス等)が混入しているため、全て廃棄処分とし、新しく購入したコウライ芝を張ります。
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運び出し風景
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整地終了
ティー面などを張替える場合、排水不良等の問題があれば、下地を耕運するなどして盤を作り直しますが、今回はその必要がなく、下地に肥料・改良剤を混入した砂を少し入れて整地します。
■ 芝張り
コウライ芝などを張る場合、間(目地)を空けて張り、芝の横への生育を待つ方法もありますが、ゴルフ場の場合、早く仕上げたいために、目地を空けない「ベタ張り」で施工します。手順としては、外周の1周以上を先に張り、ティーのセンターにロープ等でラインを決めてから、中を張っていきます。注意点は隣り合った芝の目地が重ならない事と、三角形のような不定形の芝は、外周の中に入れる事です。
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芝の張り方
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芝張り途中
目砂
芝を張り終えたら、その上に目砂をします。大面積の場合、ある程度木レーキで均し、最後は竹ボウキですり込みをします。
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目砂終了
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目砂終了
転圧
最後に芝の面を平らにするために、ローラーで転圧をします。ゴルフ場には様々なローラーがありますが、今回は手押しエンジン付きのローラーで作業しました。
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転圧風景
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カラスよけ
これで芝張替え作業はほぼ終了ですが、5月ごろに完全に芝の根が張るまでは、水やり等に気を付けて養生します。そして芝張替え後の最大の敵は「カラス」です。土中の虫を食べるために穴を掘るよりも、薄い芝をめくるほうが楽なので、毎日のように朝になると綺麗に張った芝を裏返してあるのです。 現在はこれを防ぐために、夕方から朝までの間、「カラスよけ」を設置し、日中は撤去します。大変ですが、これを毎日繰り返すことでかなりの効果を上げています。
今回、清澄ゴルフ倶楽部では洋芝ティー8面の張替え工事を全て終了し、5月末の使用開始に向けてメンテナンスをしています。それまでの間、皆様にはご迷惑をお掛けしますが宜しくお願いします
清澄ゴルフ倶楽部 グリーンキーパー 野呂田 峰