コラムColumn
グリーンキーパーのひとり言72
バンカー基盤排水工事(キャピラリーコンクリート)
2020年02月12日
2020年、今年のコース管理は波乱の幕開けでした・・・
12月31日、1月1日の2日間は、コース全体を休場日として、私を含め年に一度の全員休暇を頂いていました。そこに大晦日の午後、最大瞬間風速20m/s超えの台風並みの突風が吹き、グリーンに掛けてあった霜除けシートがほとんど飛ばされてしまったのです!
私は遠方に滞在していましたので、残っていた従業員2名が、有志で元旦からシートの補修作業をしてくれました。通常6名以上のチーム作業ですから、本当に大変だったと思います。当倶楽部に赴任して早17年となりますが、これほどのシートが飛ばされたのは初めてで、しかもお正月に・・・
コース管理の従業員に改めて感謝をしながら新年のスタートとなりました!
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飛ばされたシート
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掛けなおしたシート
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新年の営業スタート
当倶楽部は近年この時期に5日間の連続休場日を頂き、設備改善に努めてまいりました。今年は2月3日から7日までとし、お客様にさらなるサービスの向上を目的として、懸案事項に着手しました。
その1つが16番ホールのクロスバンカーの改修で、昨年東松山市でも大きな災害があったように、度重なる豪雨に対応できなくなってきたバンカーを蘇らせる工事です。
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大雨後のバンカー
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ポンプアップの様子
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前回のテスト工事
今回紹介するキャピラリーコンクリート工法は、一昨年5番ホールでテスト施工したもので、現在もその効果は持続しています。基本的にバンカーは凹地なので、周囲に降った雨が流れ込みやすくなっています。豪雨になると表面の砂は勿論、法面の基盤となる土までも崩れて流されることが珍しくありません。これを繰り返すことで排水管付近にシルト(細かい砂)が溜まり、目詰まりを起こして排水不良となるのです。
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芝はがし盛土前
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流れ込みを防ぐ盛土
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芝張り完了
今回はバンカー内の工事をする前に、少しでも法面から周囲の雨水が流入しないようにマウンドを作り、水を逃がすための工事をしました。造形終了後の1月28日に雪から75㎜の大雨となり、工事前のバンカーに水は溜まったものの、法面の崩れは少なく、盛土の効果が確認されました。
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古い砂の除去
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キャピラリーコンクリート施工
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砂を入れ完成
キャピラリーコンクリートについて簡単に説明すると、元々土であった基盤を崩れないようにコンクリートで固めてしまいます。ただし透水性も同時に確保することが必要なので、細かい砂利とセメントに加えて特殊な発泡剤を加えて撹拌します。これが現地で一定の厚みに敷き詰められ固まると、多孔質の「かみなりおこし」のような基盤が出来上がります。
メーカーの説明では、「体積の35%の水を吸収し、水が垂直方向に移動するので、砂の流れも最小限に抑えられる。」とのことです。
昨年から新ルールが適用となり、ゴルフの煩わしいかなりの部分が解消されましたが、バンカーだけは特殊エリアの扱いが変わらず、競技の時などは、復旧の最重要課題となります。繰り返しお伝えしているように、ゲリラ豪雨が増えた昨今では、コースメンテナンスの中で我々が「バンカーに取られる時間」は驚くほど増加しています。
①バンカーが崩れたから、流されたから直す。
②バンカーに水が溜まったからポンプで抜く。
この多大な労力を要する作業を、ただ繰り返すのではなく、根本的な解決策があるならば少しでも改善し、未来のキーパーのためにも地道に工事を進めていきたいと思います。
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給湯用配管一部入替え
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風呂場脱衣室床張替え
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カート電磁誘導線一部引き直し
連続休場日ということでお客様には一時ご不便をお掛けしましたが、今回も倶楽部の懸案事項をかなり解消することができました。日頃のストレスをコースで発散し、気持ちよくプレーしていただくために、今後も設備改善を続けていきたいと考えています。
清澄ゴルフ倶楽部 支配人 野呂田 峰