コラムColumn
グリーンキーパーのひとり言7
グリーンのエアレーション
2005年05月29日
ベストシーズンのゴルフ場、天気も最高! 今日は頑張るぞ!と練習グリーンへ・・・。球を置いて転がそうと思ったらグリーン上には無数の穴! 「なんだ、このグリーンは!?」という目に合われたお客様がいらっしゃると思います。今回は、我々が年間を通してグリーンのコンディションを保つために行う、更新作業(エアレーション)についてのお話です。
プレーヤーにとっての良いグリーンの条件とは何でしょうか? 「スピード」、「見た目の美しさ」等々あるとは思いますが、私が考える第一は、「ライン通りスムーズに転がる事」です。その観点からすると、グリーン面に穴を開け、凹凸をつくるエアレーションという作業は、プレーヤーの敵以外の何者でもありません。2グリーンのコースであれば、かなり大胆なエアレーションをしても、穴が埋まり、スムーズな面になるまでの「養生期間」を設けることが出来ます。しかし、清澄のような1グリーンのコースでは、作業翌日のグリーンをプレーヤーに提供しなければならず、「エアレーション効果」と「パッティングクォリティー」の狭間で、我々グリーンキーパーは毎回、頭を痛めています。
エアレーションは「なぜ? 何のためにやるのか?」という大問題は最後にするとして、とりあえず、その作業手順をお話します。
■ ①グリーンのエアレーション
エアレーションをする機械は我々の業界に数えきれないほどの種類がありますが、同じ穴を開けるにしても2つの異なった方法があります。
1つは総称して「ムク刃」と呼ばれるもので、穴をタインで刺して開け、中の土は取らないもの。もう1つは中空になったタインを利用して、中の土と表面の芝を取る方法(コア抜きと言います)です。
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ムクタイン
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十字型のスタータイン
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サイドオープンのタイン
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エアレーション風景①
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エアレーション風景②
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深い穴のエアレーション(バーチドレン
■ ②コアの回収
サイドオープンのタインで抜き取ったコアは、ブラシの付いたスイーパーで回収します。
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コアスイーパー作業①
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コアスイーパー作業②
■ ③ローラー転圧
エアレーション作業後には、単に穴が開いているだけではなく、機械による細かな凹凸ができます。これをローラーで転圧し、平らな面にします。
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ローラー転圧風景
■ ④目砂散布作業
穴の中には、改良剤や微生物資材等、土中に入れたいものを混合した砂を散布します。
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混合ミキサー
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目砂散布
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ブラシによるすり込み
各ゴルフ場によって作業手順の差はありますが、およそこのような流れでエアレーションは行われます。 春と秋に施工するのがメインで、それ以外にもグリーンの状態や天候を考えて、方法や回数を決定します。
では、このような作業はグリーンにとって、どうして必要なのでしょうか? 例えば、田んぼや畑の作物では、毎年、苗や種を植える前に「土の耕運」が当たり前のように行われます。この事で固結 した土壌に酸素が送られ、善玉バクテリアの働きが活性化するために団粒化し、水分の調整(透水性と保水性)が可能になるのです。
これらの植物にとって良い環境作りが、土壌の耕運ができないグリーンにとっては最も難しい作業となるのです。80%以上砂から出来ているグリーンでは、透水性を保ちながら、液相、気相、固相のバランスをとるために耕運の代わりとしてエアレーションをするのです。 サンドグリーンといえども床土の固結が進み透水性が悪くなると雨の中でのプレーにも直接影響が出てきます。根張りの悪いグリーンでは、水分、養分を効率よく活用することが出来ず、 必要以上の水分や肥料を投入する事となり、病害虫にも弱くなります。すると薬剤の使用量も増加し、高コスト、低パフォーマンスの悪循環に陥るのです。
エアレーションの効果で土壌環境を整え、根系を作る事が、我々の仕事です。根から下が良くなれば、その上に生育するグリーン面の葉を良い状態にする事は、それほど難しい話ではありません。
エアレーションは、シーズン中の「一見良いグリーン」を壊す形で行われることが多く、コースに対するクレームNo.1です。それでも、今の管理技術においては必要不可欠なものと理解して頂ければ、私たちの仕事も少し救われます。
清澄ゴルフ倶楽部 グリーンキーパー 野呂田 峰